REPORT
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キックオフから1年、
未来に続く次の一手とは?
保育所活用のプラン案も発表!
昨年の夏、ポートランド市との連携によるまちづくりが始まり、約1年。
「暮らして楽しいまちづくり」をテーマに掲げ取り組んできた
プロジェクトを発表する講演会が有田川町きびドームで開かれました。
ゲストスピーカーはポートランド市開発局の
山崎満広さんとPLACE STUDIO、propel studioの方々、
有田川からはまちづくりチームAGWから3人が登壇しました。

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まちのにぎわいに繋がる、根っこ(ソフト)の重要性。

中山正隆町長のあいさつからはじまった講演は全3部構成で行われ、第1部では昨年と同様にポートランド市開発局の山崎満広さんにポートランドのまちづくりについてお話し頂きました。

はじめに、昨年度からの取り組みによって取り上げられたメディアについて。また今年の初めにポートランドで行われた内閣府主催「環境未来都市」構想推進国際フォーラムで有田川の事例が紹介されたことなどが報告されました。

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行政主導ではなく、まちに住む人々が自らアクションを起こし進めることの重要性を改めて、ポートランドの事例を交えながら説明。

また、まちを木に例えた時、どんな綺麗な葉を飾っても、その根っこがしっかりしていないと長く繁栄することはないという話から、まちのにぎわいやストーリーを生むために外からのハード(インフラや建築物など見えるもの)の支援からではなく、どうしてやるのか、誰が管理するのかなどのソフト(目には見えない所)から考えることがハードを機能させるために大切だということを教えて頂きました。

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有田川、AGW(Aridagawa Weird)チーム、1年間の軌跡。

第2部では有田川町の1年間の取り組みを住民の中でまちづくりを中心になって行っているAGW(Aridagawa Weird)チームメンバーと一緒に振り返りました。

登壇者は3名、まずはリーダーの森本 真輔さん。有田川町で丸十家具という家具屋さんを経営しています。

ポートランド市とのまちづくりについて話を聞いた時は、

「まちのことについて何をするのか。」「そもそもポートランドって国なのか、まちなのか」など疑問ばかりだったそう。

その後、有田川の視察後にReport3でエイミー・ネイギーさんから

「まちに女性の姿がない。」とのコメントで生まれたのが女子会でした。

登壇者の楠部睦美さんもこの会が関わるきっかけに、「まちを変えたいという熱い思いに共感して関わることを決意しました。」と今では有田川で民家を改装し、ゲストハウスを経営しています。

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「暮らして楽しいまちづくり」のキープレイスとしてあげられているのが

廃園の決まっていた田殿保育所。廃園する保育所を今後どのように使っていくか、

これまでのAGWチームに限らず、周辺の住民の方から幅広く意見を集めるため、開催されたのが「ありがとう田殿保育所」というカフェ・ワークショップイベントでした。

AGWチームのメンバーがそれぞれ持っているものを持ち寄り、個々人が主体的になって作り上げたイベントには今年卒園した卒業生から、58年前、最初に卒園した方、また以前、園長をしていた方まで関わってきた多くの方が集まることになりました。OZAWA ORANGE FARMを営む登壇者の小澤守史さんは参加者からの「次いつやるのか」という声に場所の必要性と可能性を感じたとのこと。この取り組みはポートランドチームからも高く評価されました。

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有田川が変われば、世界が変わる。

第3部は2部の最後にも登場した田殿保育所のコンセプトをデザインしたPLACE STUDIOからMauricio Villarrealさん Dylan Morganさん Jennifer Huangさん竹村由紀さん。propel studioからLucas Grayさん Nick Miraさんが登壇しました。

これまでのポートランドチーム、AGWチームの話し合いを元に、どんな機能、施設があれば良いかを整理。田殿保育所を建物とランドスケープ(建物以外)の2つの視点から考え、長年使われた保育所に対して、いかに新しい特徴や良い雰囲気を持たせるかについて、またまちににぎわいを生むために通り全体としてのデザイン案が発表されました。

小商いが始めやすいような集合の小店舗に、その場でものづくりが出来るようなスタジオなど、わくわくするような仕組みがたくさんありました。

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デザイン案はAGWチームだけでなく、周辺地域の区長さんや住民などコミュニティの意見もワークショップを通して引き出しており、保育所の建物内に裏にあるお寺への参道を通すといったアイデアなども盛り込まれています。今後は、ポートランドチームによって可視化されたコンセプトデザインを踏まえて、地元の力で実現へ向けて具体的な建築設計へと進めていきます。

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最後に山崎さんから1年間の関わりの感想として、仲間内の話す内容が変わり、有田川のコミュニティが同じ未来に向かって成長していること。またその上でさらに女性が活躍する環境を作れるのではないかと感想を頂きました。

また、このプロジェクトの政策アドバイザー・有井安仁さんはこれまでの企画、話し合いに関わっている人の多さを話した上で、問題に対するチャレンジをする人こそがまちの希望であること。そうした希望が増えていくことでまちに住みたいという人も増えていく。「日本における地方創生の課題は世界の問題の先取りでもある。今、有田川がその問題を解決し、変わっていくことは世界を変える大きな一歩となる。」と熱くメッセージを送りました。

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公演終了後は山崎満広さんが先日出版された著書、「ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる」のサイン会も開催。

有田川とまちの人々が1年の中でどう変わってきたのか、また今後も止まらず未来に向かって変化していくことをリアルに感じられる講演会になりました。

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